読売新聞 日曜版よみほっと 旅を旅して4月21日に掲載

画像クリック>読売新聞オンライン旅を旅して 自治都市の誇り 息づく…今井町(奈良県橿原〈かしはら〉市)
画像クリック>読売新聞オンライン「旅を旅して」自治都市の誇り息づく…今井町(奈良県橿原市)

「民家」は、その時代その時代を映し出す鏡のようなものでありました。

また、各民家には調度品があり、各家に応じた設(しつら)えをし、子孫に引き継いでいく事によって各家の愛着精神も相続されてきました。

家じゅうよく磨き込まれ黒光りをした床や柱を見ると愛着の高さをうかがい知ることができます。

まさに、それが文化の根源であり、真髄ではないでしょうか。

 家を長く大切に使うことは、何にもましてそこに住む者の愛情である事はいうまでもありませんが、家の骨組みである柱や梁を太くして強固なものにしなければならないという知恵を長年の経験によって見つけ出しました。

 このように愛着精神の相続が伝統を育んでいき、文化を生むのだと思います。つまり、文化は生きていなければ意味が無いのです。

 

 民家建築が文化財として着目されるようになったのは、第二次世界大戦後で1955年(昭和30年)、関野克・太田博太郎・伊藤ていじ・鈴木嘉吉・渡邉定夫ら東京大学工学部建築学科による町屋調査を経て、倒壊寸前の今西家が1957年(昭和32年)6月18日に棟札とともに国の重要文化財に指定されたことに端を発し、わが国の「町並み保存運動」が鼓動をあげることになります。

また、1975年(昭和50年)に文化財保護法の改正によって重要伝統的建造物群保存地区の制度が発足したのも今井町の町並みを守るためでした。

 

 財団法人今西家保存会設立以来、評議員を務めていただいていた故伊藤ていじ先生が初めて今井町へ訪れられた頃の今西家は、倒壊寸前だった事を追想されておられます。